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2025年10月25日(土)に東京藝術大学奏楽堂で開催された公演について報告をいたします。

小雨がぱらぱらと降る中で、予定通り15時に開演となりました。

ピアノ独奏曲に始まり、オーケストラ曲で終わった今回のプログラム。

 

 1.橋本國彦《をどり》、江文也《台湾舞曲》/ピアノ:田中翔平

 2.山田耕筰《香妃》より/テノール:大平倍大、ソプラノ:松岡多恵、アルト:朝倉麻里亜、ピアノ:丸山滋

 3.江文也《香妃傳》より/指揮:高井優希、演奏:東京藝術大学「戦後80年」特別オーケストラ

 4.クラウス・プリングスハイム《タイのメロディ》/ヴァイオリン:野口千代光、ピアノ:日下知奈

 5.プラシッド・シラパバンレン《シャムの組曲》/指揮:高井優希、演奏:東京藝術大学「戦後80年」特別オーケストラ

 

ご覧の通り、演奏機会の少ない曲がプログラムに並びました。

当日、舞台上で演奏者へのインタビューをおこないましたが、後日あらためて演奏者の皆様にアンケートを実施しましたので、回答の一部をご紹介します。


回答者:田中翔平さん

Q. 今回特に大変だった部分は何でしたか。

A. 作品が多く演奏されているわけではないので、和音やフレーズの予測がつきづらく曲を構成していく過程が難しく感じました。

Q. 今回の演奏を踏まえて今後の目標や課題などはできましたか。

A. これからもこういった(知名度はそこまで高くはないが歴史的に意義のある)作品を世に広めていく機会を大事にしたいと思いました。

 

回答者:日下知奈さん

Q. 《タイのメロディ》を演奏した感想を教えてください。

A. とらえどころのない不思議な曲でした。

Q. 最初に演奏曲の楽譜を見たとき、あるいは練習を始めたとき、どのように感じましたか。その印象は、本番に至る過程で変わりましたか。

A. ピアノだけで譜読みをしている時は調性があるようでない和音構成だったので音楽がどこへ向かっているかよくわからなかったがヴァイオリンのメロディが入って少し曲のキャラクターがつかめた気がします。

 

他に、関係者へのアンケートもおこないましたので、一部をご紹介します。

回答者:楠田健太さん(教員/演奏藝術センター)

Q. 本公演の制作について、工夫されたことを教えてください。

A. 当初より史料室側からご提案いただいた「制作プロセス自体をアーカイブ化する」という試みに共感し、極力それを意識するように心がけた。資料は共有フォルダに保管している。

 

回答者:郭君宇さん(学生/本学博士後期課程)

Q. 江文也が日本の演奏会でとりあげられたことについて、どのように感じていらっしゃいますか。

A. 江文也の作品が日本で演奏されることは、非常に意味のあることだと感じています。彼は 20 世紀を代表する在日中国人留学生の一人であり、その作品にはまさに日本での学びの成果が反映されています。

また、彼の音楽に見られる独自性や多文化的な背景は、日本の聴衆が当時の中国人留学生の活動のあり方を理解する手がかりにもなります。

さらに、大学史史料室では、江文也の学生時代の資料が展示されており、優れた作曲家がかつて身近な場所で学び、成長していたことを実感させてくれます。これは後輩にとって大きな励ましでもあります。

今回、江文也のご親族の方々が来場され、彼の成績表や授業記録をご覧になったことも、とても感慨深い出来事でした。ご家族にとっても、大きな喜びと誇りにつながったのではないかと思います。

 

回答者:匿名希望(外国人)

Q. 芸術領域における「アジア」や「日本」について、どのような考えをお持ちですか。

A. 絶えずに、西洋を意識しながらやってきた部分があった。とりわけ、日本は脱亜入欧に捉われ過ぎ、アジアではないような自己認識をもとにに独自性なり、先導性を主張してきたと思う。日本もアジアの一部であることを見直すべき。

Q. その他(もし何かあればご自由にご記入ください)

いい企画でした。ありがとうございました!!


当日は、資料展示もおこないました。

 

また、本公演には、台湾のドキュメンタリー映画から取材依頼が舞い込みました。

公演日には江文也のご家族のかたもご来場くださっていたので、演奏はもちろん、関係者インタビューなども充実したそうです。

 

公演日の前日に、大学史史料室でも取材を受け、江文也に関する一次資料をお見せしました。

 

こちらのドキュメンタリー映画は、2028年8月に公開予定だそうです。

 

ドキュメンタリー映画 「机上に舞う手のひら:江文也 Belonging」

(台湾政府の客家委員会が映像制作会社「十月影視 October Films」に委託)

監督:符昌鋒氏、プロデューサー:簡家琪氏

 


本公演は、日本だけでなく、台湾、中国、タイ、ドイツへのまなざしを含み持っています。

準備段階から、たくさんのかたがたにお力添えいただきました。

本公演にご協力くださった皆様、ご来場くださった皆様に心より御礼申し上げます。

 

当日、客席で国籍の異なるかたがたが和やかにお話されている様子を見て、音楽が人と人をつないでくれたことを実感しました。

国際情勢が緊迫する今、互いに尊重し合い文化交流していくことは非常に重要ではないでしょうか。