東京音楽学校の学校生活(明治後期~昭和前期)
——今から約100年前の音楽学校生たちは、どのような場所で何を学んでいたのだろうか?
現在、東京藝術大学食堂「藝大食樂部」にて、東京藝術大学音楽学部の前身である東京音楽学校の明治後期〜昭和前期の学校生活をテーマに展示を行っています。
このWebページでは、より詳細な解説のほか、演奏会プログラム等の食堂には展示していない資料もご覧いただけます。リンク先では音声もお聴きいただけます。
【展示情報】
日時:2022年7月11日(月)~15日(金)10~16時 *食堂の 営業時間に準ずる
場所:東京藝術大学 美術学部側 食堂「藝大食樂部(げいだい くらぶ)」(壁面)
1. 通学、正門をくぐって……
2. レッスン風景
3. 演奏旅行
4. 邦楽演奏会風景
5. 授業
6. 校舎
7. お知らせ
ごあいさつ
私たちの音楽生活のルーツはどこにあるのでしょうか?
西洋音楽が本格的に日本に入ってきた明治時代。近代日本における音楽の一つの拠点となったのが、明治12(1879)年に設立された音楽取調掛を前身とし、明治20(1887)年に開校した東京音楽学校でした。
大学史史料室は、本学音楽学部の前身である音楽取調掛・東京音楽学校で作成された公文書や、ご関係者様からの寄贈資料を所蔵しています。当室では、本学のあゆみを生き生きと伝える多様な資料に、誰もがアクセスしやすく、活用できる環境を整えるとともに、これらの資料を未来に保存継承するべく日々活動しています。
このたびの展示では、大学史史料室所蔵の写真、公文書、演奏会プログラム等を通して、本学の歴史を身近に感じていただけますと幸いです。
1. 通学、正門をくぐって……
左から秋葉良造、畑中良輔、秋元道雄、1人おいて中田喜直、葛原守。
東京音楽学校の男子生徒の制服は、黒の背広に黒の棒ネクタイ。演奏会にも好都合でしたが、上野界隈を4、5人で歩けば“上野のカラス”と呼ばれました(昭和17年入学の岩井直溥述)。
昭和15年入学の彼らのクラスは《級歌》(一色範義作詞・草川宏作曲)を作るほど仲が良かったようです。
2. レッスン風景
明治40年には、研究科声楽1年に三浦環(当時の姓は藤井)、本科声楽部3年に山田耕作、器楽部3年に本居長世らが在籍していました。教授陣には幸田延(ピアノ・唱歌・和声学)や安藤幸(ヴァイオリン)らがいました。
三浦環は国際的に活躍した日本初のオペラ歌手。幸田延と安藤幸(幸田幸)姉妹は作家の幸田露伴の妹たちで、延は日本で初めてのクラシック作曲家・ピアニストと言われることもある人物です。
明治期から昭和中期にかけて、東京音楽学校ではどのような音楽が演奏されていたのでしょうか?
是非♬こちらからご試聴ください。
♩瀧廉太郎(東くめ作歌)《四季の瀧》
♩ヘンデル(鳥居忱作歌)《神武東征》(原曲《ハレルヤ》)
♩グルック(石倉小三郎・乙骨三郎・吉田豐吉・近藤逸五郎訳詞)歌劇《オルフォイス(オルフェーオとエウリディーチェ )》より
など
3. 演奏旅行
昭和18(1943)年9月12日 山本元帥讃仰演奏会後、長岡の旅館にて。
戦時中、東京音楽学校の生徒も学徒動員により、戦地へ赴きました。
戦時音楽学生Webアーカイブズ「声聴館」:https://archives.geidai.ac.jp/seichokan/
4. 邦楽演奏会風景
昭和5(1930)年6月21日、皇太后陛下本校行啓御前演奏より。能《鷺》、シテ:宝生英雄、ツレ:武田喜永。
東京音楽学校では明治32(1899)年4月21日の皇后行啓演奏会以来、御前演奏会が度々行われていました。
昭和12(1937)年11月16日、銃後奉仕邦楽演奏会(於 日比谷公会堂)より。宮城道雄作曲《箏協奏曲》第1楽章、箏:宮城道雄、ピアノ:黒澤愛子。
《春の海》で有名な宮城道雄も東京音楽学校で教鞭をとっていました。
史料室ではこの演奏会のプログラムも所蔵しています。
5. 授業
昭和10年代の東京音楽学校では、「体操」の授業が予科・本科・甲種師範科・邦楽科の全てに週2時間、課されていました。
写真は運動会の様子でしょうか。
各専攻実技のレッスンの他には、語学(英、独、仏、伊)、国語、音楽史、教育、美学、音響学、合唱、オーケストラ、ブラスバンド、修身、体操などがありました。
当時の学生は土曜日の午前中も授業を受けていました。
6. 校舎
『同聲會報』第259号(昭和16年3、4、5月)表紙より。
『東京音楽学校一覧 自昭和四年至五年』より。
下側中央「イ」が表門、右側中央の「ネ」が奏楽堂。小さな練習室「リ」と教場=教室やレッスン室「ヌ」がたくさんあります。
私たちの先輩はどのような学生生活を送っていたのか?写真、文書、図面などから、当時の学生たちの様子を想像することができます。
この約100年、変化したものもあれば、受け継がれてきたものもあります。
少し立ち止まって、藝大の歴史、自分がここで学ぶ意味などを考えたいですね。
史料室では、東京藝術大学音楽学部(東京音楽学校、音楽取調掛)の歴史的資料はもちろん、日本人音楽家のルーツに関わる資料など、様々な角度から興味を持っていただける豊富な資料を所蔵しています。
例えば、本学出身の音楽家のこと、近現代日本の音楽教育について、日本歌曲の歌い方について、美術と音楽の違いは?そもそも自分の習ってきた演奏はどこから来た?……など、興味の対象は人それぞれですが、当室の資料を多くの方の知的探求のきっかけにしていただけましたら幸いです。
7. お知らせ
今回の展示に関連する演奏会が2022年8月に開催予定!
演奏会について知りたい方は こちらから!