このたび、大島正規様・大島妙子様より《オルフォイス》関連の大変貴重な資料をいただきました。
ご寄贈くださいました資料は、大島正泰氏*のお母様でいらっしゃいます
大島(竹内)今子様(1903/明治36年9月 東京音楽学校予科入学、1907/明治40年3月 卒業)
がお持ちだったようです。
*ご寄贈者のお二人の父上であり、資料所蔵者の今子様のご子息でいらっしゃる大島正泰氏は、
東京音楽学校出身のピアニストです。
(正泰氏の兄上のお一人は、東北地方の歴史研究の開拓者と知られる正隆氏です。)
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《オルフォイス》は、1903(明治36)年7月に東京音楽学校奏楽堂で上演されたオペラです。
作曲者は、クリストフ・ヴィリバルト・グルック(1714〜1787)。
演出つきで全幕舞台上演されたこの《オルフォイス》は、
日本人による初のオペラ上演とされています。
主な出演者は以下の通りです。
指揮:ノエル・ペリー
ピアノ伴奏:ラファエル・フォン・ケーベル
百合姫(エウリディーチェ):柴田環(後の三浦環)
オルフォイス(オルフェオ):吉川やま
アモオル(アモール):宮脇せん
大学史史料室にご寄贈いただいた資料は、「オルフオイス演奏紀念」(写真帖)と
書き込み入りの楽譜(ペータース版ヴォーカルスコア)です。
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写真帖には、本居長世のサインがあります。(「本居長世 蔵」と記入されています。)
本居長世は、この資料を所蔵されていた大島(竹内)今子様の1年先輩にあたり、
東京音楽学校で同じ時期に学んだ二人には交流があったと考えられます。
楽譜には鉛筆で日本語の歌詞が記入されています。
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エウリディーチェ=百合姫!
「嗚呼、小暗き森の中、百合姫、汝が墓に、魂魄ただよはば…」とはじまるこの日本語の歌詞は、
『歌劇オルフォイス』(東文館、1903)に掲載されている歌詞と一致しています。
当時は、この歌詞でうたわれていたものと推察されます。
『オルフオイス演奏紀念』(写真帖)の「歌詞訳者」欄には、以下4人の氏名が記載されています。
石倉小三郎、乙骨三郎、吉田豊吉、近藤逸五郎
歌詞の書き込みを見ていると、明治時代のオペラ上演の一端に触れられるような気がします。
日本のオペラ黎明期を伝える貴重な資料です!
ご興味あるかたは、ぜひ大学史史料室にお越しください。