こんにちは。大学史史料室です。
玉川佳代子様より吉本光蔵氏関係資料をご寄贈いただきました。資料整理も完了しましたのでご報告いたします。
吉本光蔵 [よしもと みつぞう/こうぞう]氏(1863-1907)は明治時代に海軍軍楽長を務めた軍人で、客演等でも東京音楽学校に所縁のある人物です。この3月に退任された本学楽理科教授の塚原康子先生がライフワークとして研究に取り組まれてきた人物でもあります。
今回ご寄贈いただいたのは、辞令、日記、蔵書、肖像画等、計108点の大変貴重な資料群です。
↓玉川佳代子氏寄贈資料一覧(Excelファイル)のダウンロードはこちらから
【公開用】玉川佳代子氏寄贈資料(吉本光蔵氏関係資料) 一覧表
実は、大学史史料室では別のご遺族からご寄贈いただいた吉本氏の資料も所蔵しています。どちらも元々は吉本氏の持ち物でしたが、複数のご遺族の皆様の元で別々に保管された後に、この度大学史史料室にて再び一緒になりました!資料たちも久しぶりの再会を喜んでいることと思います。
以前、菊池武篤様よりご寄贈いただいた資料群は以下のものです。吉本氏が撮影した貴重な日露戦争の写真は次のデジタルアーカイブからすぐにご覧いただけます。
↓菊池武篤氏寄贈資料一覧(Excelファイル)のダウンロード、デジタルアーカイブ閲覧はこちらから
吉本光蔵撮影日露戦争写真一覧 – 東京藝術大学 アーカイブセンター
前置きが長くなりましたが、ここからは今回ご寄贈いただいた資料の中からいくつか画像とともにご紹介いたします。

吉本光蔵氏没後の1918年(大正7年)に「KIZO YOSHIDA」という人物によって描かれた吉本氏の肖像画(油絵)です。金色に着色された木製の立派な額縁におさめられています。吉本氏の名前の読み方は「みつぞう」と「こうぞう」の二通りありますが、画の左上には「M. YOSHIMOTO」とあるため、ここでは「みつぞう」と読ませているようです。
この肖像画は以前トピックスでご紹介した塚原先生の最終講義においても早速展示させていただきました。
→塚原康子先生最終講義(ミニ展示)の終了報告 – 東京藝術大学 未来創造継承センター 大学史史料室

こちらは、明治32年(1899年)に海軍省によってドイツ留学を命じられたときの辞令です。このとき吉本氏は数えで37歳。海軍軍楽隊からの初めての留学者でした。留学中の学費は年額二千円が海軍省から支給されていたようです。
海軍省は、何を期待して吉本氏に留学を命じたのでしょうか?
それは、こちらの資料に書かれています。吉本氏の任務は以下のことだったようです。
「一 我国軍楽に適応すべき実際的音楽および学理的音楽の研究」
「二 軍楽隊の組織教育等に関する事項の調査」
ただ音楽の実技を学ぶだけでなく、軍楽隊の組織教育に関することまで幅広く学ぶことが求められたのですね。
渡独して1年余り音楽実技やドイツ語などの準備をした吉本氏は、明治33年10月に無事入試に合格、ベルリン高等音楽院に入学します。ドイツに2年半余滞在(ベルリン高等音楽院には1年半弱在籍)した後、明治35年に日本に帰国。同年、海軍軍楽長に任命されます。
留学中は、同じくベルリン高等音楽院に留学していた幸田幸(後に安藤幸)や、瀧廉太郎と交流することもありました。そのときのことは日記にも詳しく書かれています。
玉川様、この度は大変貴重な資料のご寄贈をありがとうございました。大切に保管し、活用・継承してまいります。
ご紹介した資料は、どなたでも大学史史料室にてご覧いただけます。ご興味をお持ちくださった方は、当ホームページの「お問い合わせフォーム」からご予約ください。
皆様からのご寄贈もお待ちしております!
参考文献:
塚原康子・平高典子著「海軍軍楽長・吉本光蔵のベルリン留学日記」、『東京藝術大学音楽学部紀要 第37集』、平成23年度、44-46頁。
塚原康子(研究代表者)「近代日本の軍楽隊研究」、「科学研究費補助金(C)研究成果報告書」、令和7年、79頁。
(冨澤麻衣子)