音楽教育研究室より資料をご寄贈いただきました。今回の寄贈資料を見渡してみると以下の2つの資料に分類できそうです。
A.学内関係の諸資料
昭和51~53年度(1976~1978年度)の音楽学部・音楽研究科の授業時間割表、学位審査日程、学生募集要項、履修規定、学事歴、研究生、各国の音楽大学の学位、東京藝術大学言語・音声トレーニングセンター履修案内、教育実習の手引き、図書館利用案内などの関係資料
B.皇后陛下行啓演奏会の演奏曲目の資料
皇后陛下行啓演奏会は、昭和9年(1934)4月21日に東京音楽学校で行われました。第一部の「邦楽」(画像1)と第二部の「洋楽」(画像2)から構成されており、前者は、「能楽、箏曲、長唄」、後者は、ヴィヴァルディとバッハの作品からなっています。実は、一部と二部の間にも演奏があります(『東京芸術大学百年史 演奏会編 第二巻』参照)。
https://archives.geidai.ac.jp/collections/100co/
全体的に和と洋のバランスが取れている内容になっていますが、プログラムを参照すると、同演奏会には、異なる人物・団体によって創作された《皇太子殿下御誕生奉祝歌》と冠される作品が4回演奏されています(以下、曲名、創作人物/団体、演奏場面)。
a.《皇太子殿下御誕生奉祝歌》 高野辰之(作詞)、宮城道雄(作曲)
→第一部「邦楽」に箏曲作品として演奏
b.《皇太子殿下御誕生奉祝歌》 文科省(謹作)
→第一部と第二部の間に演奏
c.《皇太子殿下御誕生奉祝歌》 日本教育音楽協会(謹作)
→第一部と第二部の間に演奏
d.《皇太子殿下御誕生奉祝歌》 東京音楽学校(謹作)
→第二部「洋楽」の最後に演奏
寄贈資料『昭和9年4月21日 演奏曲解説及歌詞 東京音樂學校』(画像3)と『昭和9年4月 皇太子殿下御誕生奉祝歌譜 東京音樂學校』(画像4)(画像5)には、cの《皇太子殿下御誕生奉祝歌》の楽譜と曲目解説が掲載されています。
曲目解説では“先づ曲はG長調四分四拍子の堂々たる大行進曲に始まる”(画像5)、 “この部分は國民の歡喜を表現したものであつて、八分六拍子の軽快なテンポにな る”(画像6)、“この邊から曲調はワルツ風になり、『人々語りかはせば』でD長調 に轉じ『ばんざい~』で國民の歡喜はクライマックスに達し~”(画像7)などとあり、国民の心が高鳴るプロセスを意識した楽曲作りが読み取れます。
この度は貴重な資料をご寄贈いただき誠にありがとうございました。多くの方に活用していただけるよう、引き続き整理を進めて参ります。
(澤田聖也)